2008年度研究会


第1回 第2回 第3回 第4回

 第1回

日時:7月19日(土)13:30-18:00,場所:東北大学東京分室

[1] 国際会議報告
Acoustics 08概略(琵琶哲志)
・論文紹介 "Low operating temperature integral thermoacoustic devices for solar cooling and waste heat recovery" K. De Blok
 および"Study of a thermoacoustic-Stirling engine" H. Tijani, S. Spoelstra and G. Poignand (上田祐樹)
・論文紹介"Physical mechanism and theoretical model of thermoacoustic heat exchangers" E. C. Luo and B. Bao(琵琶哲志)
・論文紹介"Geometry effects and scaling in thermoacoustics" J. Zeegers(坂本眞一)
ISNA概略(坂本眞一)

[2] 熱力学シリーズ「量子論の誕生」富永昭
黒体放射の研究はエネルギー量子仮説の形で場の量子論を生み出した。ギブズの統計物理学で確立されたエネルギーの等分配則が破綻していることはエネルギー量子の存在根拠でもある。古典的には波と考えられていたものに粒子性を容認するのが場の量子論であり、古典的には粒子と考えられているものに波動性を容認するのが粒子の量子論である。前期量子論は波と粒子の二重性を容認し、これを定式化する努力だった。場の量子論の始まりは粒子の量子論よりも早かったが、場の量子論の定式化は粒子の量子論よりも遅れた。

[3] 話し合い
今後の研究会活動について参加者で話し合いを持った.次回は熱交換器についての討論を中心に据える予定.
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 第2回

日時:10月11日(土)13:30-17:00,場所:東北大学東京分室

振動流場における熱交換器のイメージ
熱音響現象の理解に伴って振動流場における蓄熱器(再生器,蓄冷器)の理解の仕方は一変しました.熱交換器についても定常流場と振動流場においては合理的な理解の仕方が異なる可能性があります.しかし,振動流場における熱交換器のイメージすら明確になっていないのが現状です.この研究会では「熱交換器」に焦点をあてて,講演会というよりはむしろ討論会の形式で行う参加型研究会としました.「よい熱交換器とは?」「熱交換器性能をどのように実験的に調べるか?」などの素朴な疑問点について,積極的に討論を行いました.

[1] 振動流熱交換器の討論会
【招待講演】「スターリングエンジンの熱交換器設計の基礎」平塚善勝

振動流体の熱交換を基調としたスターリングエンジンを題材とし、基礎的な熱交換器設計について説明した。設計の根幹は、振動流体に定常流もしくは振動流体の基礎試験により導出された熱伝達率を使って熱交換量や熱交換効率を算出することにある。従来の基礎的な設計方法の理解をするとともに振動流体への設計方法の課題を抽出することを目指して議論を行った。

[2] 最近の研究成果から

[3] 話し合い(今後の研究会活動について,他)
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 第3回

日時:12月20日(土)13:30-17:30,場所:東北大学東京分室

[1] 【招待講演】「77K大型冷凍機開発」大橋 義正
2004年度~2007年度にかけて、超電導電力ネットワーク制御技術開発の一環として、大型のスターリング型パルス管冷凍機を開発してきた。その中で、77K300Wの冷凍出力を持つ冷凍機を開発した。これらの開発状況の一端を紹介する。また、同開発の中で、日本大学殿との協業で得た、冷凍機の基礎的な評価結果について紹介する。

[2] 【招待講演】「低温度差型スターリングエンジンの開発について」竹内 誠
スターリングエンジンには利用する熱源温度差により高温度差型と低温度差型がある。当社では低温度差型の開発を行っており、その概要を紹介する。低温度差型は伝統的な 高温度差型と異なる設計要件があり、それを満足するために駆動機構や熱交換器に独特の工夫を施している。

[3] 【招待講演】「熱音響理論からみた吸・放熱器」富永昭

[4] 【招待講演】熱力学シリーズ「量子統計物理学」富永昭
ボルツマンの原理に現れた運動論的状態の数の意味が量子物理学により理解され、量子統計物理学が始まった。量子統計物理学の例として、2準位系と理想気体を議論する。金属の自由電子気体モデルから期待される電子比熱が室温の金属では異常に小さいことは電子をフェルミ粒子とみなすことで解決された。

[5] 話し合い(今後の研究会活動について,他)
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 第4回

日時:3月28日(土)13:00-18:00,および3月29日(日)9:00-12:00,場所:東北大学東京分室

3月28日
[1] 「境界層理論に基づくタコニス振動のモデリングとシミュレーション」
   清水大(阪大),杉本信正(阪大)

 熱音響現象に境界層理論を応用することで基礎方程式を準1次元に帰着させた非線形モデルを提案し,タコニス振動の数値計算を行うことにより,このモデルが管内気柱の初期の不安定化から,振動の飽和,飽和後の定常的な自励振動の出現に至る過程をうまく説明できることを示す.これに加え,滑らかなステップ型温度分布に対する臨界曲線も数値的に求め,勾配を急にするにつれてRottの結果に近づくことを示す.また,過渡振動と定常振動時の音場と平均エネルギー流束を調べることで,不安定化のメカニズムを境界層から主流部への音響エネルギー流束で説明できることを示す.

[2] 「Phase Adjusterが管内音場に与える影響 - 数値計算による熱音響システムの設計に向けて -」
   坂口敦(同志社大),坂本眞一(滋賀県大),塚本大地(同志社大),小宮慎太郎(同志社大),土屋隆雄(同志社大),渡辺好章(同志社大)

 熱音響システムの実用化に向けては,エネルギー変換効率の向上が必要不可欠である.エネルギー変換効率を向上させる一つの手段として,これまでにPhase Adjuster(PA)が提案されており,大幅なエネルギー変換効率向上に成功している.しかしながらPAの働きの詳細なメカニズムについては,不明な部分が多く,これらの解明に向けて検討が進められている.本報告では,定在波生成の初期段階である,一次反射による音場形成に伴うPAの効果について着目し,数値計算を用いて検討した.

[3] 「ループ管方式熱音響冷却システムの実用化に向けた研究 - 分岐管の利用によるエネルギー変換効率の向上に関する検討 -」
   石野貴廣(同志社大),坂本眞一(滋賀県大),小宮慎太郎(同志社大),北谷裕次(同志社大),渡辺好章(同志社大)

 ループ管の実用化にはプライムムーバにおける熱から音へのエネルギー変換効率の向上が必要不可欠である.効率良くエネルギー変換を行うには,スタック内における音圧と粒子速度の位相差が重要となる.そこで,位相差を調節する手法としてループ管に分岐管を設置する手法を考案した.分岐部分では流路断面積が広がるため,分岐部分において粒子速度が遅くなるという境界条件が付加される.この境界条件により位相差調整が可能となり,熱から音へのエネルギー変換効率の向上に成功した.

[4] 「蓄熱器とスタックによる音響パワーの増幅」
   羽鳥祥一(農工大)

Biwaらは温度勾配のついた蓄熱器もしくはスタックによる音響パワーの増幅を実験的に行った.(PRE Vol. 69 (2004))この結果から,音響パワーの増幅率は圧力と流速の間の位相差に大きく依存することを示した.本研究では,位相差だけでなく,圧力と流速の振幅比にも注目し,音響パワーの増幅率の計算を行い,計算結果を実験結果と比較した.さらに,計算結果を利用して蓄熱器とスタックを有した装置を設計し,音響パワーの増幅率30倍を実現した.

[5]「熱音響エンジンの安定限界曲線上における効率」
   永田翔平(農工大)

熱音響エンジンは三つのタイプ(直管タイプ,ループ管タイプ,枝管付きループ管タイプ)に分類できる.本研究では,3つのタイプの熱音響エンジン内で生じる自励振動の安定限界条件をそれぞれ数値計算し,さらに,安定限界条件でのエンジン内の音場を計算した.得られた音場を用いてエネルギー変換効率を計算し,3つのタイプの熱音響エンジンの効率の比較を行った.

3月29日
[6] 「熱力学シリーズ」量子統計物理学
   富永昭(殿物研)

 ボルツマンの原理に現れた運動論的状態の数の意味が量子物理学により理解され、量子統計物理学が始まった。量子統計物理学の例として、2準位系と理想気体を議論する。金属の自由電子気体モデルから期待される電子比熱が室温の金属では異常に小さいことは電子をフェルミ粒子とみなすことで解決された。

[7] 「タコニス振動の数値シミュレーションによる安定性解析」
   石垣将宏(名大),石井克哉(名大)
タコニス振動とは熱音響自励振動の一種で,細い管の軸方向にある一定以上の温度勾配を与えることで管内の流体が振動を開始する現象である。本研究では両端を閉じた管内で生じるタコニス振動を扱う。管には両端で高温,中央部分で低温になるような温度勾配を与えた。閉管を2次元の矩形領域とし,2次元圧縮性Navier-Stokes方程式を用いて,数値シミュレーションを行った。講演では,タコニス振動の安定性について解析した結果を報告する。

[8] 「低温度差熱音響スターリングエンジン」
   長谷川大地(東北大),琵琶哲志(東北大)
熱音響エンジンの臨界温度比はどこまで下げることができるのだろうか.我々はループ管と共鳴管を組み合わせたタイプの熱音響エンジンを対象とし,第二蓄熱器を設置するという方法で臨界温度比を下げることを試みた.熱音響エンジンのQ値に着目することで,室温での散逸の程度,蓄熱器内でのエネルギー変換の活発さの二つの要素を調べ臨界温度比を確認した.管内に第二蓄熱器を設置すると,蓄熱器一つの場合と比べて室温での散逸が大きくなる一方,系でのエネルギー変換が活発になることが分かった.この結果を基に,臨界温度比1.76 ( 温度差226 K )の熱音響エンジン (TC = 298 K) において,臨界温度比を 1.19 ( 温度差57 K ) まで下げることができたので報告する.

[9] 「ベーシック型,オリフィス型,ダブルインレット型パルス管冷凍機の音響インピーダンス」
   岩瀬貴志(東北大),琵琶哲志(東北大)
 パルス管高温端に取り付けたバルブを開けるだけで,ベーシック型パルス管冷凍機はオリフィス型パルス管冷凍機へと進化する.両者を経験した研究者によれば,その冷凍性能の違いは「まるで全く別の冷凍機」だ.この冷凍性能の変化は蓄冷器内の圧力と流速の相互関係(位相関係)により説明されてきた.ダブルインレット型では位相関係はより一層,スターリングクーラーに近づくと考えられている.しかし,バルブやタンクの位相調節機能に対する実験的研究は依然として不十分であり,もっぱら等価回路に基づいた理論的解析が行われているのが現状である.
 本研究では,圧力と流速の同時計測によりパルス管内の振動流ダイナミクスを直接観測した.特に着目したのは複素音響インピーダンスである.複素音響インピーダンスの位相角は流速に対する圧力の位相の進みを表し,その大きさは流速に対する圧力の振幅比を表す.ベーシック型,オリフィス型およびダブルインレット型パルス管冷凍機は異なる冷却特性を示すことが知られているが,実験ではその違いを反映するような特徴的な複素音響インピーダンスが得られた.このことは,バルブやタンクは,位相角と振幅比の両方をコントロールする,いわば「音響インピーダンス調整器」として機能することを意味する.

[10] 熱音響の未来を語る討論会,参加者全員
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